面接時は優秀だと判断した人材が実際はそうではなかったということはよくあることです。優秀な人材が欲しいと願い、何十人何百人と採用を行ってきたことでしょう。その全てにおいて正しい判断を下せたとは言えないのが現実ではないでしょうか。数回程度の面接で人物を正確に捉えることは難しいと言わざるをえません。限られた時間しかないので、必要なサンプルを集めることができないからです。

ノーベル経済学賞受賞者で心理学者のダニエル・カーネマンが提唱している「少数の法則」というものがあります。少数の法則とは、少ないサンプルで得られた結果が正しいと錯覚することをいいます。

例えば、「300人の高齢者を対象に電話調査を行ったところ、内閣の支持率は60%でした」という調査結果をもって「高齢者は内閣を支持」と判断してしまうことが挙げられます。サンプルが300人では少なすぎると言わざるをえません。しかし、多くの人がこのサンプルが少ないことを無視して判断してしまう傾向にあるとカーネマンは指摘しています。

採用面接でも少数の法則が働き、数回程度の面接で優秀ではない人材を優秀な人材と錯覚してしまう傾向があります。少数の法則で錯覚が発生しないように100回の面接を行いたいところですが、様々な制約でそう何度も面接が行えるわけではありません。サンプルを増やすことは現実的ではないでしょう。採用面接では少数の法則が働いてしまうことは致し方ないといえます。

採用面接ではもう一つ、重大な錯覚が働いてしまうことが指摘されています。それは「ハロー効果」です。ハロー効果とは、物事を評価する際に、ある評価が他の評価に影響を及ぼすことをいいます。例えば、一流大学卒業の人物は人格も優れていると錯覚してしまうことが挙げられます。ハロー効果は採用面接で頻繁に見受けられます。優秀な人材を採用するにはハロー効果を抑制させなければなりません。

■ ハロー効果を抑えた採用方法とは?

そこで、カーネマンはハロー効果を抑制させて優秀な人材を採用する方法を提唱しています。イスラエルの軍全体の面接システムとして実際に構築された方法です。軍だけでなく企業での人材採用にも応用できるとしています。

手順を紹介します。まず、仕事に必要な適性を六項目程度決めます。その特性はできるだけ互いに独立するようにします。また、その事実確認を行えるような質問も用意します。次に、各項目についての質問リストを作成し、採点方式を考えます。例えば、5段階評価だったり、甲乙丙評価だったり、傾向が強いか弱いかといった評価方法などが挙げられます。

ハロー効果を抑制するための運用上の注意点があります。面接官は項目ごとにすぐに評価するようにします。質問を飛ばすようなことや、最後にまとめて項目を評価するようなことはしてはいけません。そして、項目ごとに点数で評価し合計点数を出します。合計点が最も高い応募者を採用します。

面接官の個人的な判断や直感は挟まないようにします。カーネマンは人間の個人的な判断や直感はあてにならないと言います。その最たるものがハロー効果だとしています。あくまで点数で決定するのです。

これが、カーネマンがイスラエルの軍全体の面接システムで採用した人材採用システムになります。この採用システムは非常にシンプルです。採用面接は少数の法則が働くため、どうしてもシンプルにならざるをえません。むしろ、シンプルでなければならないともいえます。

シンプルなため不安にかられるかもしれませんが、膨大な量の研究により、一般的に行われている面接方式よりも、この方式の方が最高の人材を選べる可能性がはるかに高いことをカーネマンは約束するとしています。検討する価値があるのではないでしょうか。

出典:ダニエル・カーネマン著『ファスト&スロー(上)』(村井章子訳 早川書房)

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