飛ぶ鳥を落とす勢いのヘアーカット専門店の「QBハウス」。2007年に国内来客者数は1000万人を突破し、15年には1500万人を超えました。シンガポールや香港、台湾にも出店し、12年に国内外で500店舗を突破しています。

QBハウスの特徴は“10分の身だしなみ”を標榜し「10分1000円」(価格は税別)でカットするという、スピードと低価格にあります。理美容業界における吉野家(「うまい、やすい、はやい」を標榜)のような存在といえるでしょう。男性のビジネスパーソンを中心に人気となっています。

理容室・美容室といえば、時間をかけて丁寧にカットすることが今までの主流でした。理美容師は顧客の希望のスタイリングをヒヤリングし、顧客と会話をしながら丁寧に時間をかけてカットします。顧客によってはさらにシャンプーやシェービング、マッサージなどのサービスが加わります。顧客の滞在時間は男性の場合、40分程度でしょう。客単価は4000円程度が主流です。

■ カットのみに特化した

こうした業界の常識を打ち破ったのがQBハウスでした。顧客自身ができることはすべて省き、「カット」のみに特化することで10分というスピードと1000円という低価格を実現しました。シャンプーをしないので切った髪を水で洗い流すことができませんが、シャンプーの代わりに掃除機のようなエアウォッシャーを使うことで切った髪を吸い取っています。

1000円という価格は客単価としては低いです。しかし、時間あたりの客単価は他の理容室・美容室と大して変わりません。40分で4000円だとしたら、10分あたり1000円です。QBハウスは水やシャンプーなどを使用しない分、コストは低く利益率が高いビジネスモデルとなっています。また、10分という短時間は回転率を高める効果があり客数を稼ぐことができます。

QBハウスは「伸びた分だけカットする」ことに主眼を置いています。理美容室のボリュームゾーンは「おしゃれなヘアスタイル」を望む顧客でしたが、QBハウスは、おしゃれなヘアスタイルは二の次でとにかく伸びた分だけカットして手軽に済ませたいというニッチ市場に目を向けたことが成功につながりました。

■ 顧客満足度1位を獲得

一見すると、顧客はそれでは満足しないのではないかと思ってしまいます。しかし、2015年度JCSI(日本版顧客満足度指数)第3回調査で、生活関連サービスにおいて顧客満足度第1位を獲得しています。

商品・サービスの差別化を図る場合、多くの企業は「付加価値」を見出すために過剰に機能や便益を付け加えがちです。あれもこれも付け加えていった結果、消費者にはその商品・サービスの特長がぼやけてしまい、逆に付加価値がなくなってしまうというケースが少なくありません。しかし、QBハウスは無駄な機能や便益を逆に取り除くことで新たな付加価値を創造することに成功したのです。

■ 除去することで付加価値を創造

経営学者のフィリップ・コトラーが提唱した、商品・サービスの差別化を図る手法に「ラテラル・マーケティング」というものがあります。ラテラル・マーケティングではギャップを生み出す6つの技法が提唱されていて、そのうちの一つに「除去する」という技法があります。QBハウスはまさに(一部の顧客にとっては)無駄な機能や便益を「除去する」ことで新たな付加価値を生み出すことに成功したのです。

15年の国内の店舗数は492店舗で出店の余地はまだまだあると言えるでしょう。海外市場も同様です。課題は、今後の出店のペースに見合った理美容師を確保できるかにあります。サービス業では人材不足が深刻でQBハウスも例外ではありません。カット技術の維持も重要です。伸びた分だけカットするにしても、低いカット技術では話になりません。理美容師の数を確保した上でカット技術の維持・向上が不可欠です。優秀な人材を数多く確保することができるのであれば、今後のさらなる成長が期待できると言えるでしょう。

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