「無料」ほど人を惹きつけるものはありません。ビジネスで活用しない手はないでしょう。「無料」で集客を図れます。

心理学と行動経済学の権威、ダン・アリエリーは自身の著書『予想どおりに不合理』(ダン・アリエリー著/熊谷淳子訳/早川書房)で、「無料」の有効性を示す興味深い実験を紹介しています。

■ チョコレートの実験

その実験では、「リンツのトリュフ」と「ハーシーのキス」の二種類のチョコレートを販売し、「無料」がどれほどの効果があるのかを試しました。ちなみに、リンツのトリュフは高級チョコレートで、ハーシーのキスは普通のチョコレートです。

まず、リンツのトリュフを15セント、ハーシーのキスを1セントで販売したところ、73%がリンツのトリュフを買い、27%がハーシーのキスを買いました。

次に、リンツのトリュフを14セント、ハーシーのキスを無料で販売しました。どちらも等しく、1セントずつ値段を下げました。そうすると、リンツのトリュフを買った人は31%に減少し(73%から)、ハーシーのキスを買った人は61%に跳ね上がりました(27%から)。

以上の実験はたまたまだったのかもしれないと考え、他でも同様の実験を繰り返したところ、どの実験でも「無料」にした途端に人気が急上昇するという結果が得られました。

「無料」の威力は強力です。人間は本能的に、何かを失うことを恐れています。たとえ1円でも、失いたくないと無意識に思うものです。しかし、「無料」は経済的には何も失うことがありません。損をすることがないのです。これは、経済学というよりも心理学に近い現象といえるでしょう。専門的には「行動経済学」の領域になります。

■ コメダは「無料」で集客と利益確保を実現している

「無料」を活用して成功した企業は枚挙にいとまがありません。たとえば、東京証券取引所の第1部に上場したばかりのコメダホールディングスが展開する「コメダ珈琲店」がわかりやすいでしょう。コメダでは開店から朝11時まで、ドリンクメニューには「無料」でモーニングサービス(トースト・ゆで玉子のセットなど)を付けることができます。一例として、ブレンドコーヒー(420円)に「無料」のモーニングサービスを付けることができます。

これは、ブレンドコーヒーとトースト、ゆで玉子の3つをセットとして420円で販売しているのと価格の面では同じです。しかし、3つをセットとして420円で販売するのと、1つを420円とし、2つを「無料」にして付け加えてセットで販売するのとでは、支払う価格は同じでも感じる印象は異なるものになります。先のチョコレートの実験と同じで、コメダの「無料」のモーニングサービスは、利用客にとっては実態以上に魅力的に映っているのです。

コメダのモーニングサービスは非常に人気のあるサービスメニューとなっています。コメダホールディングスの16年2月期の営業利益率は30.2%と非常に高い利益率となっていますが、モーニングサービスが大きく貢献しているようです。

コメダの例からも分かるとおり、ビジネスにおいて「無料」は非常に効果的で、活用しない手はないでしょう。商品・サービスの一部をあえて「無料」にするのです。たとえば、「送料無料」「大盛り無料」「二つ目無料」「10分延長無料」「相談無料」などです。

■ 「無料」の活用における注意点

「無料」の商品・サービスを提供する際に注意しなければならないのが「コスト」です。「無料」の商品・サービスだけでは利益を生み出すことができません。そして、コストがかかります。利益率の高い他の商品・サービスの購買に結びつけなければ意味がありません。トータルでの利益とコストの管理が必要です。

「無料」の商品・サービスで集客できたとしても、トータルでは利益が出ていなかったといったことになりかねません。「無料」を活用する場合は、ビジネス全体での利益とコストの進捗管理と結果検証が不可欠といえます。

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