応用数学の一分野に「ゲーム理論」が存在します。戦争や経済、社会において「利害関係のある各人の選択が各人に影響する場合、どの選択が最も合理的か」を考える理論です。

ところで、世の中に存在するゲームには多くの種類がありますが、大きく二つに分けることができます。一つは、ルーレットやサイコロなどの偶然性のみが支配するゲームです。どの選択肢を選んでも期待値が同じであり、選択肢の中からその都度異なるものを選択することを「混合戦略」といいます。

「じゃんけん」がわかりやすい例となります。じゃんけんでの最適な混合戦略は「グー」「チョキ」「パー」を三分の一ずつランダムにだすことだとわかっています。相手の出方は無視し、ルーレットのようにランダムにグー、チョキ、パーをだすことで勝つ確率が最大になります。

■ ビスマルク海海戦とは

そしてもう一つが、相手の出方と自分の出方の組み合わせにより最適な戦略が変わるゲームです。ゲーム理論はこちらに該当します。よく引き合いに出されるのが「ビスマルク海海戦」です。ビスマルク海海戦とは、第二次世界大戦における日本軍と連合国軍との間で起きた海戦のことです。

日本軍は物資を運ぶために、海域にある島の「北側の航路」か「南側の航路」を通過する必要がありました。どちらの航路も所要日数は「3日間」です。ただ、北側の航路は降雨により発見されにくく、南側の航路は快晴で発見されやすいことが想定されました。

日本軍はどちらの航路(選択肢)が安全性は高いのかを考える必要があります。一方、連合国軍はどちらかの航路に偵察機を多く向かわせて攻撃を仕掛けるのが日本軍に大打撃を与えることができるのかを考える必要があります。

連合国軍が偵察機を「北側」に多く向かわせる場合は、日本軍の航路が「北側か南側かを問わず」、「2日目に発見」となり「2日間の爆撃」が行なわれます。連合国軍が偵察機を「南側」に多く向かわせる場合は、日本軍の航路が「北側」の場合は、「3日目に発見」となり「1日間の爆撃」が行われ、日本軍の航路が「南側」の場合は、「1日目に発見」となり「3日間の爆撃」が行なわれます。

まとめると、プレイヤーは「日本軍」と「連合国軍」となり、選択肢は「北側」か「南側」となり、4つのケースに分けることができます。そして「爆撃の日数」を数値として表します。表でまとめると以下のようになります。利得表とは簡単に言うと「損得」を数値で表した表のことです。

「連合国軍」
|北側|南側|
|-2 2|-1 1|北側「日本軍」
|-2 2|-3 3|南側

左側の数値が日本軍の爆撃の日数で、右側の数値が連合国軍の爆撃の日数となります。プラスの数値は「爆撃できる日数」なので、損得でいえば「得」になります。マイナスの数値は「爆撃される日数」なので、損得でいえば「損」になります。

日本軍側から見てみると、北側を選択した場合、連合国軍が北側を選択していたら「-2」で、南側を選択していたら「-1」なので、期待値(簡単に言うと平均のこと)は「-1.5」になります。日本軍が南側を選択した場合、連合国側が北側を選択していたら「-2」で、南側を選択していたら「-3」なので、期待値は「-2.5」になります。

そうすると、被害が小さく済むのは北側になるので、日本軍は北側を選択する方が合理的と考えることができます。連合国軍側から見てみると、北側を選択した場合、日本軍が北側を選択していたら「2」で、南側を選択しても「2」なので、期待値は「2」になります。

連合国軍が南側を選択した場合、日本側が北側を選択していたら「1」で、南側を選択していたら「3」なので、期待値は「2」になります。連合国軍側にしてみれば、北側を選んでも南側を選んでも利得は共に「2」なので、どちらを選んでも変わりません。であれば、日本軍がどちらを選ぶ確率が高いのかを判断することになります。日本軍にしてみれば「北側」の方が期待値は高いので、日本軍は北側を選択するだろうと予想し、見事それが当たったのです。

■ プロスペクト理論とは

また、連合国軍にはプロスペクト理論の影響があったとも考えられます。プロスペクト理論とは、意思決定が期待値どおりに行われず、その人が置かれた状況によって左右されることを定式化した理論のことです。

連合国軍側としてみれば、北側を選択しても南側を選択しても、期待値はどちらも「2」になります。しかし、プロスペクト理論では、確実に利得が「2」であるのと、1か3かわからない「2」では意味合いが大きく異なるとし、多くの人が前者の「2」を選択することがわかっています。

これは利得が「得」の場合ですが、逆に利得が「損」の場合は異なる結果が得られることがわかっています。確実に利得が「-2」であるのと、-1か-3かわからない「-2」では、多くの人が後者を選ぶことがわかっています。連合国軍に当てはめてみると、連合国軍は「得」のケースに当てはまるのですが、確実に「2」が得られるというプロスペクト理論に沿った選択をしたとも考えられます。

いずれにしても連合国軍はゲーム理論に沿って選択肢を考えました。結果として日本軍は北側の航路を選択し、連合国軍は北側に多くの偵察機を向かわせ、日本軍は壊滅的な打撃を受けてしまう結果となってしまいました。これはかなり単純化した図式ですが、ゲーム理論の凄いところは、あらゆる決断がこのゲーム理論のように確率論で動いていることを証明したところにあります。

【店舗をより良くしたい人へ】Facebookで『店舗カイゼン委員会』と検索するとグループが表示されます。『グループに参加』をクリックすると無料で参加できます。店舗をより良くしたい人が集まる新しいコミュニティです。

 icon-arrow-circle-right 詳しくはこちら