「天才は、なぜヒットを打てたか説明できない。ぼくは、きちんと説明できる。だから天才じゃない」

店舗経営を行う上で、経済学や経営学を学ぶことは非常に大事です。経済学や経営学は経済や経営の仕組みや原理原則を追求する学問です。「学問なんて実際の経営には役に立たないのでは?」と思っている方は少なくはないことでしょう。「何事も実践が大事だ」と。

イチローは「なぜヒットを打てたか説明できる」と述べました。スポーツも店舗経営も同じで、経営者はなぜ経営が上手くいったかを説明できる必要があります。世の中は基本的に原理原則で動いています。経営を説明できるということは、経営の原理原則を説明できるということを意味します。経営の原理原則とはすなわち経済学や経営学に他なりません。

■ 天才数学者の理論

ところで、フランスの天才数学者のブノワ・マンデルブロが提唱した「フラクタル」という概念があります。フラクタルとは、樹木や海岸線などの自然界にある複雑な形状を、同じパターンの図形で表す数学的概念のことです。フラクタルには「自己相似」が働いています。自己相似とは、なんらかの意味で全体と部分とが相似であることをいいます。

カリフラワーの一種にロマネスコという野菜があります。ロマネスコは自己相似の様相を呈しています。細かい部分を観察してみると、全体の形と酷似していることがわかります。

ある入り組んだ海岸線を細かく観察してみます。一見なんの秩序もない海岸線に見えます。しかし、海岸線を拡大して細かい部分を観察してみると、同じような海岸線が現れます。さらに拡大して観察してみると、また同じような海岸線が現れます。さらに拡大していくとまた・・・。どこまでいっても全体と部分が相似しているのです。

フラクタルを簡単に言うと「一つの物体の小さな部分の形と大きな部分の形が同じ」ということです。このように、自然界にはいたるところにフラクタルがあります。一見すると不規則に自然界が広がっているように見えても、実は規則正しく広がっていることがわかります。マンデルブロは「自然はフラクタル」と言い、自然界は自己相似によって形成されているとしています。

マンデルブロ集合というフラクタルを象徴する幾何学的な図形があります。コンピューターにとある簡単な数式を入力し、その式をひたすら循環させて現れる点をプロットしていくと複雑な図形ができていきます。この図形の細部を見ていくと、先のロマネスコや海岸線の様に細部が全体と同じかたちをしているのがわかります。全体と部分とが相似なのです。

フラクタルとは、樹木や海岸線などの自然界にある複雑な形状を同じパターンの図形で表す数学的な概念のことでした。自己相似により全体と部分とが相似しているのです。マンデルブロは「自然はフラクタル」と言いました。

ところで、「サッカーはカオスであり、フラクタルである」という言葉があります。これは、ヴィトル・フラーデ教授が定義づけた言葉です。フラーデ教授は「戦術的ピリオダイゼーション理論」というフラクタルの考え方を取り入れた理論を確立しました。

■ サッカーの名監督の理論

世界最高のサッカー監督の一人と言われているジョゼ・モウリーニョがコーチング理論として採用したことで一躍有名になりました。この理論の基本的な考え方は「試合を全体とし、練習を部分とし、相似した形で練習する」というものです。全体と部分とを切り離すのではなく、全体としての練習、つまり試合形式の練習を重んじるということです。

簡単に言うと「サッカーをサッカーのまま練習する」ということになります。サッカーを構成要素で分解するのではなく、全体として捉えることが大事ということです。これまでの日本のサッカーは、「テクニックやスピードはあるが、サッカーは下手」と言われていました。

それは、サッカーを構成要素で分解し、戦術や技術、体力、精神力などを個別に考えて、それぞれを個別に練習してきたことにありました。構成要素で分解した「部分」を集めても「全体」にはならなかったのです。今では日本のサッカー界でも戦術的ピリオダイゼーション理論に沿った練習が行われるようになり、サッカーのレベルは飛躍的に向上したと言われています。サッカーの全体と部分とを自己相似として考え、「サッカーをサッカーのまま練習する」ようにしたのです。

■ 赤ちゃんの理論

もう少しわかりやすい例だと、赤ちゃんが挙げられます。赤ちゃんが「ハイハイ」の段階から「二足歩行」の段階に移行する過程を考えるとわかりやすいでしょう。赤ちゃんが二足歩行の段階に移る際に、「右足の立て方」「左足の立て方」「地面からの手の離し方」「平衡感覚の取り方」などといったことを個別的に練習することはありません。「二足歩行をする」という行動を全体として考え、ひとりでに二足歩行ができていくようになります。

これには「自己組織化」という概念が働いています。自己組織化とは、自律的に秩序を持つ構造をつくりだす現象のことをいいます。雪の結晶を考えるとわかりやすいでしょう。雪の結晶は綺麗な正六角形を描いています。雪の結晶は分子で構成されています。最初の分子は自律的に他の分子と結びついていき、やがて秩序を保つ構造、つまり「雪の結晶」ができあがっていくのです。

一口に雪の結晶といっても六角形を基本とした様々な種類が存在しますが、これは湿度や温度のわずかな違いによって変容していくからです。姿かたちは異なっても、どの雪の結晶も正六角形の「秩序を保つ構造」には変わりはありません。

サッカーにおいても自己組織化が働いていると考えることができます。赤ちゃんが「ハイハイ」の段階からいつのまにか「二足歩行」に移行していくように、サッカーも「サッカーのままの練習」から「サッカーそのもの」に移行していきます。「部分」が「全体」を構成します。そして、「二足歩行」も「サッカーそのもの」も「秩序を保つ構造」であるのです。

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