モンベル(mont-bell)は、登山用品、アウトドア用品の製造、販売、イベント運営・企画、傷害保険などを手がけている企業です。

登山やアウトドアの市場規模は拡大傾向にあります。モノが溢れる現代に生きる人々は、モノへの憧れからコトへの憧れを抱くようになりました。そして、非日常への憧れ、達成感・充実感への欲求を抱く人々が、登山やアウトドア需要をつくり続けています。2013年に富士山が世界文化遺産に登録された影響もあり、登山やアウトドア市場はさらに活気づいています。

登山・アウトドア市場で成長し続けているのがモンベルです。モンベルは1975年に創業しました。当初はメーカーとして、登山用品の企画、製作を行っていました。その後、モンベルというブランドを世の中にもっと認知してもらいたいと考え、1985年に直営店の出店を開始しました。

直営店を出店するようになったのは、モンベルの世界観を消費者に提示したいという強い思いがあったからです。それまでの供給先の小売店は売れる商品しか置かないため、モンベルの商品の中でも売れる商品だけしか置いてもらえないという悩みを抱えていました。モンベルは、売り上げを上げること以上にモンベルのファンをつくりたいという想いが強くあったので、直営店において自分たちの手で直にモンベルの世界観をつくり上げようと考えたのです。

モンベルはものづくりに対する強いこだわりがあります。アウトドア用品や登山用品といった商品の特性上、いい加減な商品は提供できないと考えています。効率を重視する経営では支持されることはないと判断しました。特に登山用品は人の生命に関わることもあるため、製品のブランドとしての価値が問われるからです。

■ 「自分たちが欲しいものをつくる」という「こだわり」

そのこだわりは「自分たちが欲しいものをつくる」というものです。ややもすると傲慢に聞こえます。一歩間違えると、顧客を無視したものづくりをしていると思われかねません。

モンベルの従業員は、本社社員から直営店のアルバイトまで、アウトドアスポーツが好きな人たちです。そして、アウトドア好きの従業員が欲しいと思う商品を開発してきました。

自分が欲しいと思う商品を提案してもらったり、何気ない会話から出てくるものを商品企画案として吸い上げていきました。それが年間4,000件以上にもなるといいます。自分たちがつくりたいもの、欲しいものをつくりました。そして、実際に自分たちで使ってみて、試行錯誤して改良を加え、新たな商品を次々と開発してきたのです。

ほとんどの従業員がアウトドアスポーツを経験しているというのは大きな強みといえるでしょう。モンベルには、大きな採用活動を行わなくとも、毎年400~500人の入社希望者が集まるといいます。その多くがモンベルの価値観に共鳴し、かつ、アウトドアが好きな人たちです。

商品開発を企画部といった一部の人間だけで行うのではなく、全従業員によるオールモンベルで行なっています。自分たちが欲しいものをつくるという、一見すると顧客を無視したマーケティング手法と思われるものでも、実は顧客と同じ目線をもつ従業員の意見が反映された、本物の顧客志向のマーケティング手法であることがわかります。

そして、自分たちが欲しいと思う商品であるため、店頭で販売する際に販売員は自信を持って顧客に営業することができます。アウトドア好きという共通した価値を顧客と販売員が共有しているため、顧客は安心して販売員に質問したりし、納得した上で購入することができます。

モンベルでは全従業員が強いこだわりをもって商品を開発していきました。一方、いくら良い商品を開発しても、それが売れるかどうかは別問題であることをしっかりと認識していました。

■ 地道な「ファン」づくりを推進

継続して売り上げを上げていくには、モンベルのファンを増やしていく必要があります。ファンを獲得していく上で重要な役割を果たしてきたのが「モンベルクラブ」です。

モンベルクラブは、年会費は1,500円で、会員は60万人を超えています。会員といえば、今は無料が当たり前の時代ですが、モンベルではあえて1,500円の会費を徴収しています。1,500円を払ってでも会員になりたいと考える顧客を獲得するようにしてきました。

会員に対しては、カタログを届けたりすることはもちろん、会員向けのイベントを積極的に行うなど直接顧客と接する機会を数多くつくっていきました。また、アウトドアができる地域を抱える地方自治体と提携し、モンベルクラブの会員に対して宿泊施設、山小屋といった何らかのインセンティブサービスを提供するコラボレーションを行なっていきました。こうした地道なファンづくりと関係性強化を行ってきたことが、モンベルの成長の原動力となってきたのです。

■ なぜモンベルは終身雇用の日本型経営を目指すのか

モンベルは終身雇用の日本型経営を目指しています。能力主義や実力主義が声高に叫ばれる昨今において、日本型の終身雇用制度は時代遅れの産物かのように見られる向きがあります。このような風潮の中で、日本型経営を目指すモンベルは異端に見えるかもしれません。

モンベルの創業者である辰野勇氏はある時、アメリカの経営者から「能力の劣る社員がいた場合でも解雇できないのは、企業が収益を上げることができないのではないか」と質問を投げかけられました。それに対し、「もしあなたの子供が障害を持って生まれたり、勉強ができないからといってクビにできますか」と切り返したと言われています。

また、「企業の社会的責任としてCSRとよく言いますが、その第一歩は、従業員の雇用を維持していくことだと考えています。自分の会社の従業員を都合よく解雇しながら、ほかで社会貢献をするといっても、わたしは信用できないと思ってしまいます」とも述べています。

従業員満足を大事にする会社のトップの言葉として大きな示唆があるのではないでしょうか。これらの言葉から分かる通り、従業員を大切にするトップの考えと企業文化がモンベルにはあるのです。会社に大事にされれば従業員はその会社のファンになります。

強いブランド力を持つ企業の条件の一つに「社員に自社のファンが数多くいる」ということを挙げることができます。自社のファンである従業員は楽しく仕事をするでしょう。接客業であれば、仕事が楽しいと感じてイキイキと働く従業員が顧客を引き寄せます。

モンベルの強さは、こだわりの商品とこだわりを持った従業員にあるといえます。そして、顧客であるファンを大事にし、着実に関係性を強化してきたことにあります。卓越したマーケティング戦略を見ることができます。

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