無印良品を展開する良品計画は価値主導の「マーケティング3.0」の先端を行く企業です。

マーケティングの第一人者で経営学者のフィリップ・コトラーは、マーケティングは、モノ(製品)中心の「マーケティング1.0」から消費者(顧客)中心の「マーケティング2.0」へと移行し、そして近年は価値主導の「マーケティング3.0」の時代になっていると提唱しています。

現在、消費者はインターネットやSNSなどを通じて様々な情報を手軽に入手し、商品・サービスの購買に結びつけています。そして、価値あるものはインターネットやSNSを通じて世界中に瞬く間に広がる時代となりました。

また、グローバル化の進展で経済や文化が世界中に拡大していく一方で、グローバル化に対抗する形で、文化、地域、伝統、共同体といった従来の価値が見直される動きも出てきました。それに合わせて、消費者の購買行動にも変化が現れました。

消費者はコミュニティを形成し、必要な情報をコミュニティの中から得る動きを強めていきました。その結果、企業が発する広告やメッセージよりもコミュニティで得られる情報や意見を重視するようになりました。

さらに、物質的充足に満ち足りている今日の消費者は製品の購買だけでは飽き足らず、精神を揺さぶる体験や感動といったものまでを求めるようになりました。「モノ消費」から「コト消費」へと移行していきました。

そのため、企業は消費者に体験や感動といった新たな価値を提供することが求められるようになりました。「マーケティング3.0」で主張されている価値主導のマーケティングが必要な時代になったのです。

■ 無印良品の変遷

そのような時代において、良品計画は価値主導のマーケティングができている数少ない企業の一つです。しかし、昔から価値主導のマーケティングができていたわけではありません。今日に至るまで、様々な紆余曲折がありました。

良品計画が展開する無印良品は、第二次オイルショックで消費マインドが冷え込んでいた1980年に、「わけあって、やすい」をコンセプトとした西友のプライベートブランドとして誕生しました。そして、1989年に西友の100%子会社として良品計画が設立されます。

無印良品は、製造から販売まで一貫して行うSPA(製造小売業)型のビジネスモデルを採用しています。中間業者を介さないことによる中間マージンの削減と流通段階の在庫を圧縮することによるコスト削減を実現しています。シンプルなデザインの衣料品や生活雑貨、食品、家具といった日常生活全般に関わる商品を低価格で販売していきました。

当初の良品計画の業績は好調でした。しかし、2000年頃から急速に業績が悪化しました。2002年2月期には大幅な減益に陥っています。株価は1万7350円から2750円にまで急落しました。

業績悪化の理由は、成長への慢心、ブランド力の低下、経営戦略の迷走といったことが挙げられます。しかし、最大の理由は消費者が求める価値ある商品を提供できなくなったことにあります。

業績悪化に対して、国内不採算店舗の閉鎖や縮小、経営陣の刷新、不良在庫の処理、人材育成の改革、組織体制の変更、マニュアル化の推進といった様々な対策を講じていきました。もちろん、業績悪化の最大の原因であった商品力の復活に向けても取り組みました。

■ モノづくりコミュニティーでV時回復を実現

良品計画は、消費者と双方向コミュニケーションを行うことで消費者視点の商品開発を行う「モノづくりコミュニティー」を2001年にサイト上に開設しました。

モノづくりコミュニティーでは商品アイデアを投稿することができます。投稿されたアイデアに対して他のメンバーは投票することができます。優れたアイデアは商品化に向けてプロジェクトが立ち上がります。良品計画がプロジェクトの進捗状況をレポートし、購入の予約が一定数を超えた場合に商品化する仕組みです。

モノづくりコミュニティーにより、無印良品のコンセプトを保ちながら、消費者が求める価値ある商品を提供することができるようになりました。結果として多くのヒット商品やロングセラー商品を生み出すことができたのです。

こうした取り組みにより、2007年には売上高が1,620億円、経常利益が186億円にまで回復しました。見事なV字回復を果たしたのです。

■ くらしの良品研究所とは

モノづくりコミュニティーは2009年に「くらしの良品研究所」にリニューアルしました。同研究所で消費者と双方向のコミュニケーションを行い、協働で新たな商品やサービスを開発していきました。消費者の提案で実際に商品化された事例は枚挙にいとまがありません。

例えば、消費者の提案により、本に貼るための透明な付箋を「貼ったまま読める透明付箋紙」という商品名で発売しました。従来の付箋では貼った下の部分が隠れてしまいます。そこで半透明にすることで読み書きがしやすい仕様にしたのです。その利便性から同商品はヒット商品となりました。

他にも事例があります。「シリコーントレー/ビー玉」という商品があります。年間で2000個も売れない商品だったため販売が中止となった商品です。しかし、消費者から再販して欲しいという声が多く集まったため再販することになりました。

シリコーントレー/ビー玉は球形の氷をつくるためのトレイです。しかし、実際の主な用途は同商品を利用して特殊な液体を使って球形のアクセサリーを製作することでした。利用者とのコミュニケーションにより、良品計画が想定していなかった利用方法を知ることができたのです。

シリコーントレー/ビー玉をネットストアで500個を限定販売したところ2日間で完売しました。その次に販売したときは1日で500個売れました。その次の販売では過去4倍の数量を用意し、1人5個の制限をかけなければならないほどでした。

一商品としての販売数量は大きなものではありません。しかし、確実な需要があるため高回転で販売することができます。こういった商品が積み重なることによる売り上げへのインパクトは小さくありません。ロングテール効果を生み出すことに成功したのです。

■ SNSを有効活用

良品計画は、フェイスブックやツイッターといったSNSでも積極的に消費者との価値共創を行っています。SNSで消費者に商品の紹介や商品を活用したライフスタイルの提案、キャンペーン・イベント情報を提供しています。また、消費者の意見や苦情をSNSで積極的に汲み上げているのも特徴的です。

SNSを利用して消費者と対話を行い、商品開発やサービスの改善などに繋げています。消費者と一緒になって無印良品ブランドを構築していくことを目指しているのです。

■ アプリ「MUJI passport」を導入

「MUJI passport」による消費者との価値協創も見逃せません。良品計画は2013年5月から、無料のスマートフォンアプリ「MUJI passport」の配布を開始しました。

MUJI passportには様々な特典や機能があります。欲しい商品の店舗在庫を検索できる「ショッピングガイド機能」が搭載されていて、利用者の現在位置から近くて在庫がある店舗を案内します。また、優待価格で買い物ができるクーポンの配信も行なっています。

「マイル」と呼ばれるショッピングポイントも発行しています。店舗へのチェックインや商品の口コミ投稿、不定期に行われる商品開発の企画への参加などでマイルを貯めることができます。

MUJI passportにより良品計画と消費者のコミュニケーションが活性化しました。価値協創を手軽にできるツールにもなっています。

良品計画は消費者と協働で商品やサービスを開発する「マーケティング3.0」を推進しています。このことが好調な業績を下支えしています。消費者起点のマーケティングが強みになっているといえそうです。

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