リッツ・カールトンは満足を超えた感動のサービスを提供するために従業員教育を徹底しています。従業員にリッツ・カールトンの哲学を徹底的に叩き込みます。

しかし、いわゆるマニュアルというものは存在しません。代わりとなるのが、リッツ・カールトンが進むべき方向や宿泊客に提供するサービスなどについて述べている「クレド」(信条)です。内容は次の通りです。

「ザ・リッツ・カールトンはお客様への心のこもったおもてなしと快適さを提供することをもっとも大切な使命とこころえています。私たちは、お客様に心あたたまる、くつろいだ、そして洗練された雰囲気を常にお楽しみいただくために最高のパーソナル・サービスと施設を提供することをお約束します。ザ・リッツ・カールトンでお客様が経験されるもの、それは感覚を満たすここちよさ、満ち足りた幸福感そしてお客様が言葉にされない願望やニーズをも先読みしておこたえするサービスの心です。」

従業員はクレドが書かれたクレドカードを常に携帯し、宿泊客にサービスを提供する際の行動指針としています。クレドは現場の従業員の意見を取り入れて、常に少しずつ変更を加えています。

従業員はクレドの行動指針を元に、目の前にいる宿泊客がどうしたら満足して頂けるかを考えます。宿泊客一人一人に対して関心を持ち、それぞれに最適なパーソナルコミュニケーションを行います。

パーソナルコミュニケーションを深化させるには宿泊客を詳細に観察する必要があります。何気ない会話から宿泊客の情報を収集することはもちろん、ちょっとした欲求や不満、傾向などを何気ない言葉から拾い上げ、欲求の実現や不満の解消、傾向に合ったサービスを提供することが求められます。

例えば、宿泊客が何気ない会話で「オレンジが好き」という話をしたら、それ以降の宿泊の度に部屋にオレンジが備え置かれるようになったという話があります。

部屋が満室で宿泊できなかった時、従業員が他のホテルに掛け合って同等以上の部屋を手配してくれたという話もあります。

ニューヨークのリッツ・カールトンに宿泊した際に固い枕に変えて欲しいと依頼したところ、次にモスクワのリッツ・カールトンに宿泊した際には始めから固い枕が用意されていたという話もあります。

■ パーソナルコミュニケーションを重視

リッツ・カールトンではこうした宿泊客の情報をデーターベース化し、世界中の従業員でデーターベースの情報を共有しています。そして従業員はデーターベースの情報を活用し、宿泊客に対してパーソナルコミュニケーションを行います。

徹底された個別的なサービスを提供された宿泊客は満足を超え感動します。感動体験は体験した宿泊客だけに留まることなく、口コミとなって広がります。そのことがリッツ・カールトンの価値を高めることになるのです。

リッツ・カールトンの感動のサービスは卓越した従業員によって生まれます。それにしても、なぜリッツ・カールトンの従業員は他のホテルを凌駕する、感動を呼ぶサービスを提供することができるのでしょうか。

リッツ・カールトンは従業員の採用を重要視しています。タレント・プラス社と共同で開発したQSP(Quality Selection Process)と呼ばれる、心理学的な要素を多く含んだインタビューを採用で行います。応募者がリッツ・カールトンでの適性があるかどうかを細かくチェックします。

QSPには例えば「ここ2週間であなたの大事な人のために何をしましたか?」といったような質問が50以上あります。質問に対する受け答えをスコア化して適性を判定します。

相手の立場になって考えることができるか、臨機応変に対応することができるか、誠実さがあるか、品格を備えているか、集中力があるか、他の従業員と協働できるかなどを見極めます。

リッツ・カールトンはどちらかというと、トレーニングよりも個人が持つパーソナリティを重視しているようです。ホスピタリティはトレーニング以上に、個人のパーソナリティに大きく左右されると考えているのでしょう。そのため、採用の段階からホスピタリティ精神があるかどうかを見極めています。

■ 大幅な権限委譲を行なっている

もちろん採用後には継続的なトレーニングを行います。その際に重視しているのが「権限委譲」です。逐次上司の判断を仰ぐのではなく、自主的な判断でサービスを提供できるようにしています。

マニュアル的な対応では顧客満足を得ることはできません。そのため、臨機応変に立ち振る舞いができる環境を整えています。サービスの提供においては従業員に大幅な権限委譲を行っているのです。

例えば、従業員は宿泊客のために1日に2,000ドルまで自らの判断で支出することができる決裁権が認められています。従業員の判断で宿泊客に対して花を贈ったり、ケーキを用意したり、浜辺に椅子とテーブル、一輪の花、高級シャンパンを用意したりすることができるのです。

実際にあったエピソードを紹介します。ある大学の教授が大阪のリッツ・カールトンに宿泊したのですが、東京で行う講演用の資料と老眼鏡を部屋に忘れ置いたままホテルを出発してしまいました。

それに気がついた従業員は宅急便では間に合わないことを知ったので、自らの判断で新幹線に飛び乗って東京に向かい、教授に置き忘れた資料と老眼鏡を直接届けました。

資料と老眼鏡は講演の開始までに届いたため、講演は無事に成功しました。教授はこのことに感動し、その後はリッツ・カールトンの常客になりました。

このような卓越したサービスを受けた宿泊客は満足を超えて感動し、リッツ・カールトンのファンとなります。多くがリピーターになるため、継続利用により2,000ドル以上の追加的な支払いを行うことになります。長期的に見れば、リッツ・カールトンには経費以上の利益がもたらされるのです。

■ 従業員満足が顧客満足をもたらすと考えている

リッツ・カールトンは従業員を非常に大事にしています。リッツ・カールトンが定めている「従業員への約束」において、従業員に対する会社の姿勢を明文化しています。

「ザ・リッツ・カールトンではお客様へお約束したサービスを提供する上で、紳士・淑女こそがもっとも大切な資源です。信頼、誠実、尊敬、高潔、決意を原則とし、私たちは、個人と会社のためになるよう持てる才能を育成し、最大限に伸ばします。多様性を尊重し、充実した生活を深め、個人のこころざしを実現し、ザ・リッツ・カールトン・ミスティークを高める…ザ・リッツ・カールトンは、このような職場環境をはぐくみます。」

これからも分かるとおり、収益の向上は顧客満足から生まれ、顧客満足は従業員満足から生まれるとリッツ・カールトンは考えています。

ちなみに、収益と顧客満足と従業員満足との間には強い相関関係があると結論づける研究結果は数多く存在します。

例えば、Tornow and Wileyは、顧客満足と従業員満足の間には一定の関係性があると論じました。Schlesinger and Heskettは、従業員研修と権限委譲は、従業員の核となる能力が向上し、それが優れたサービスを提供することになり、それが顧客満足につながり、収益の増加につながることを論じました。

リッツ・カールトンはこのことをよく理解しています。収益の向上のために、まずは従業員満足を高める努力を行なっています。そして、ホスピタリティ精神溢れるサービスを提供しています。顧客満足は高まり、結果として収益の向上を実現しているのです。

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