レゴはストーリーマーケティングにより、レゴブランドにおいて新たな世界観を構築し、ブランドに魂を吹き込むことに成功しました。ストーリーマーケティングとは、物質的・機能的価値に加え、「物語性」や「世界観」といった人間が持つ感情を移入するマーケティング手法のことをいいます。

無機質なブランドにストーリーを吹き込むことで命が吹き込まれ、歴史が刻まれ、感情が芽生えていきます。ストーリーが吹き込まれたブランドに対して消費者は愛着や共感、信頼といった感情を抱くようになります。ストーリーマーケティングにより、ロイヤルティの高いレゴファンを獲得することを可能にしました。

レゴは2012年に、創業80周年記念としてショートムービーを作成しました。レゴの創業者オーレが経営する木工所から最後の職人が去るところから物語は始まります。

オーレは、妻の死去や火事による工房の消失などの幾多の困難を息子と共に乗り越えていきます。独創的なアイデアと最後まで諦めない気持ちで前進し、徐々に玩具メーカーとして事業を拡大していきます。

そして、「『Only the best is good enough.(最高でなければ良いとは言えない)』というコンセプトが根底にあることは変わらない」というメッセージでムービーを終えています。

ショートムービーには、製品品質へのこだわり、困難に対して諦めないことの大切さ、家族愛、チャレンジすることの尊さといったレゴが大切にする想いが込められています。消費者は共感し、親しみを持つようになりました。そしてレゴを信頼するようになり、レゴと消費者は結びつきを強めていったのです。

■ コンテンツマーケティングを推進

レゴはコンテンツマーケティングを積極的に行いました。コンテンツマーケティングとは、既存顧客との関係性の強化を図り、潜在的顧客と関わり合うために、コンテンツ(編集された情報)を作成し共有するマーケティング手法のことをいいます。

インターネットやSNSの普及により、今の時代の消費者は膨大な量の情報を受信する環境下にあります。消費者のメディアに対する目は厳しさを増しています。従来からある、一方向的情報提供型のマスコミュニケーションの限界が指摘されています。

一方で、インターネットやSNSの普及は、テレビや新聞、雑誌、ラジオといったマスメディア以外の組織、特に企業における情報発信を容易にしました。デジタル技術を活用することにより、企業がメディアになれる時代になりました。

レゴは「スターウォーズ」や「スーパーマン」、「ロード・オブ・ザ・リング」といった世界中で人気のある作品をレゴブロックの商品に採用しました。「スターウォーズ」などの人気作品をレゴブロックで再現できるとあって、普段はブロック玩具で遊ばない層までをも顧客として取り込むことに成功しました。

また、ただライセンス商品を販売するのではなく、ミニムービーやゲーム、クイズといった、作品に関連するコンテンツも充実させていきました。

さらに、コンテンツをレゴから消費者に一方的に配信するのではなく、消費者参加型のコンテンツ作りにすることにより、双方向でコミュニケーションを図れるよう工夫を施しました。

例えば、各作品ごとにマイクロサイトを立ち上げ、各作品の世界観を披露したミニムービーを公開したりしています。単にミニムービーを公開するのではなく、ユーザーが作成したレゴブロックの作品を公開できるギャラリーやメッセージボードを用意するなど、ユーザーがコミュニティを形成することができる環境を整えました。

映画のマイクロサイトでは作品のコンテストを行い、優勝者の作品を映画の劇中に登場させるといった試みも行われています。商品アイデアを消費者から募り、1万票の支持を獲得した商品アイデアは商品化が検討され、実際に商品化された場合は、発案者に売り上げの1%が支払われるといったプロジェクトも行っています。

レゴはこういった施策によりコンテンツを充実させ、既存顧客の囲い込みと潜在的顧客に対する購買のきっかけづくりを積極的に行っていきました。コンテンツの充実なくして、レゴファンの拡大は実現しなかったでしょう。

■ マインドスームで新しい価値を提案

レゴはレゴブロックを教育の場にも持ち込みました。教育ツールとしての商品開発を行ったのです。例えば「レゴ マインドストーム」という玩具教材を開発しました。

マインドストームはマサチューセッツ工科大学と共同研究して開発したロボット教材です。レゴブロックにコンピューターを内蔵したデジタルパーツを搭載し、レゴブロックをロボットとして稼働させることができます。パソコンでプログラミングを行い、プログラムに従ってレゴブロックが動きます。

プログラミングといっても難しいものではなく、プログラムアイコンをプログラム画面にドラッグ&ドロップするだけで簡単に操作できます。子供でも扱えるように設計されています。

マインドストームは1998年に販売が開始されました。今では世界中の教育現場で使用されています。日本では小中学校はもちろん、東京大学などの多くの大学で採用されています。また、情報技術や科学、技術、工学、数学といった分野での学習にも対応していて、企業の研修でも導入されています。

レゴストームは宇宙飛行士の最終選抜試験の一環として使用されたことがあります。宇宙飛行士の最終選抜試験に残った10人は、マインドストームを使って「癒しのロボットを作る」という課題がだされました。この課題により、論理的思考力やリーダーシップ、協調性、緊急対応能力、ストレス耐性などがあるかどうかを試されたのです。

マインドストームはあらゆる教育現場で使用されるようになりました。それまでの教育現場では暗記などの詰め込み教育が主流でしたが、詰め込み教育では創造性や自主性といった感性が生まれにくいという問題がありました。

こうした教育現場の問題点を解決するツールとして、レゴはマインドストームを開発しました。創造性や自主性といった能力を開発できるツールとして、新しい市場の開拓に成功したのです。

マインドストームでは消費者と一緒になって価値を創り出す「価値共創」を行っています。一般的な価値共創と異なり、共創相手は一般の消費者ではなく、マインドストームのソフトウエア・プログラムに飛びついたハッカーでした。

マインドストームが発売されて間もなく、ハッカーがプログラムのコードを解読しネット上に公開するという事件が起きました。ハッカーはプログラムを改良し、様々な動きをするロボットを開発しました。さらに、世界中の人がネットで閲覧できるようにしてしまいました。マインドストームはレゴが何年もかけて開発したにもかかわらず、ハッカーはいとも簡単に改造や改良をやってのけたのです。

これに対してレゴは大きな決断を下しました。セキュリティの強化でハッカーを排除するのではなく、逆にハッカーを味方につけようと考えたのです。プログラムのコードを公開し「ソフトを改良してもよい権利」をライセンスに盛り込みました。

さらに、改良したソフトで動くマインドストームをユーザー同士で披露できる大会を開催したり、マインドストームの愛好家が集まる場にレゴの社員も参加し交流を図ったりしました。ハッカーを製品開発に巻き込むことで、従来にはない革新的な製品開発を可能にしたのです。

企業によって生み出すイノベーションではなく、使い手であるユーザーがイノベーションを起こす「ユーザーイノベーション」という言葉があります。マインドストームはまさにユーザーイノベーションを実現したのです。

【店舗をより良くしたい人へ】Facebookで『店舗カイゼン委員会』と検索するとグループが表示されます。『グループに参加』をクリックすると無料で参加できます。店舗をより良くしたい人が集まる新しいコミュニティです。

 icon-arrow-circle-right 詳しくはこちら