体重計など計測器の大手メーカーであるタニタは、2010年1月に発売したレシピ本『体脂肪計タニタの社員食堂』やシリーズ化された本がベストセラーになったことをきっかけに一躍有名企業になりました。2012年1月に「丸の内タニタ食堂」をオープンさせたことも話題を呼びました。

以前からも名前の通った企業でしたが、レシピ本とタニタ食堂の大ヒットにより、タニタの知名度は飛躍的に向上したといえるでしょう。

公益社団法人日本マーケティング協会は、優れたマーケティング活動を表彰する「第4回 日本マーケティング大賞」に「タニタの『社員食堂』を起点としたビジネス展開」を選出しました。

社員食堂をもとにしたレシピ本が大ヒットし、タニタ食堂の経営から弁当販売まで、それぞれのビジネスが相乗効果をもたらし、本業である家庭用体重計や体脂肪計の潜在的な需要を喚起したマーケティング力が評価されました。

タニタは体重計などの計測器の大手メーカーとして知られています。1923年に創業し、創業期はシガレットケースや貴金属宝飾品などの製造販売を手がける金属加工メーカーとして事業活動を行っていました。

戦時中は軍用通信機部品の製造を行い、戦後は真鍮製シガレットケースやトースターなどを製造販売しました。OEM(他社ブランド製品の製造)による受託生産でトースターを量産化することで業績を伸ばしました。

1959年に日本初となる家庭用体重計「ヘルスメーター」の製造販売を開始し、68年にはヘルスメーターの生産台数は100万台を突破しました。

74年に事業ドメインを「はかるもの」と打ち出し、自社ブランドの育成を図っていきます。

92年に世界初となる、乗るだけで脂肪がはかれる「体内脂肪計」を発売し、94年には世界初となる、「家庭用脂肪計付ヘルスメーター」を発売しました。97年にはヘルスメーター(脂肪計含む)の売り上げで世界一を達成しました。2001年には世界初となる、「内臓脂肪チェック付脂肪計(インナースキャン)」を発売しました。

その後も「はかるもの」という事業ドメインを軸に様々な製品を開発していきます。経営理念には「『はかる』を通して世界の人々の健康づくりに貢献します」とあります。その経営理念を軸に、社員の健康の維持と増進を目的とした社員食堂を99年にオープンしました。

05年にはフィットネス事業を立ち上げました。10年にはレシピ本『体重脂肪計タニタの社員食堂』を発売しました。12年には「丸の内 タニタ食堂」をオープンしました。

■ 事業ドメインの重要性

タニタは事業ドメインを「健康をはかる」から「健康をつくる」へと進化させていきました。事業ドメインとは、組織が経営活動を行う際の基本的な事業展開領域のことをいいます。

事業ドメインの設定は企業経営において極めて重要な役割を果たします。元ハーバード・ビジネススクール名誉教授のセオドア・レビットは「マーケティング近視眼」において「鉄道会社の衰退」の事例を挙げて事業ドメインの重要性を述べています。

レビットは、「アメリカの鉄道会社は自らの事業ドメインを『鉄道会社』と捉えたため、自動車や航空機等の台頭に対応できず衰退してしまった。事業ドメインを『輸送事業』と捉えるべきだった」と述べています。アメリカの鉄道会社は事業ドメインの設定の失敗で衰退してしまったのです。

タニタは97年にはヘルスメーター(脂肪計含む)の売り上げで世界一を達成するなど、「健康をはかる」という事業ドメインにおいて確固たる地位を築くことができました。

しかし、競合が黙ってはいませんでした。何十倍もの企業規模を誇るオムロンが後発で参入してきたのです。オムロンは資金を大量投入し、有名人をCMキャラクターに起用した広告宣伝を大々的に展開してタニタに挑戦してきました。パナソニックも追随しました。

タニタのヘルスメーターは今でもトップシェアを維持しているとはいえ、こうした競合の参入により市場シェアと売り上げは次第に奪われていきました。過去最高の年間売上高は約300億円ですが、競合の参入により売上高は好調期の半分程度にまで落ち込んでいったのです。

ヘルスメーター市場は飽和しています。従来の「健康をはかる」という事業ドメインでは、競争が激しい市場環境に対応できなくなっていました。厳しい経営環境において暗中模索していくなかで、事業ドメインを「健康をはかる」から「健康をつくる」に進化させていくことで事態の打開を図ります。

■ タニタの社員食堂が話題に

タニタの事業ドメインの進化の先駆けとなったのが、99年に板橋区の本社にオープンさせた社員食堂です。タニタの社員食堂では1食あたりおよそ500kcalに抑えています。野菜は150グラムから200グラム程度使用し、塩分は約3グラム程度に抑え、健康に配慮したメニューを提供しています。

タニタは自社の社員が健康でなければ、健康に関する商品を販売する際に説得力がないと考えました。そこで、社員食堂で健康に配慮したメニューを自社の社員に提供しようと考えたのです。

社員食堂は09年にNHKの番組「サラリーマンNEO」の「世界の社食から」で取り上げられ、世間から注目を集めるようになりました。この番組を見た出版社からのオファーにより、レシピ本『体脂肪計タニタの社員食堂』を10年に出版することになりました。

レシピ本がベストセラーになったことにより、タニタの知名度は飛躍的に向上しました。しかし、本業の計測器事業は競合の参入により厳しい環境に置かれたままでした。

そのような経営環境の中、社員食堂のレシピをメニューとする食堂出店の話が舞い込んできました。こうして、健康をつくりだす情報発信基地として12年に「丸の内 タニタ食堂」をオープンすることになったのです。

タニタ食堂では健康的なメニューの提供はもとより、管理栄養士による無料の健康アドバイスを行っています。多くのマスコミに取り上げられ、連日行列ができるほどの繁盛店になりました。

タニタ食堂の成功によりタニタの知名度はさらに向上しました。本業の計測器事業にも好影響を及ぼすようになったのです。

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