衣料品を販売する「しまむら」は急成長を続けています。その原動力はどこにあるのでしょうか。

まずはしまむらの出店・立地戦略を見ていきます。しまむらは小商圏で高寡占を実現できる場所に出店してきました。

総務省の統計によると、日本の世帯あたりの年間衣料品購買額は約14万円、8000世帯の商圏での購買力は約10億円です。しまむらは商圏購買力の3分の1となる3.3億円を1店舗の売り上げの基本としています。

売場面積は1000〜1300平方メートルが最適規模と考えています。小規模ながらも商品の選びやすさやフロアの回遊性の高さを追求し、高効率の運営ができる場所、特にロードサイド立地にこだわって出店しました。

しまむらはドミナント出店(ある地域に集中的に出店する戦略)を基本としています。店舗開発を県単位で進め、隣り合う店舗の商圏が重なるように集中出店することで輸送などの面で効率化を実現しています。高密度化した店舗展開を行っていきました。

地方の主婦層をメインターゲットとし、全国の小商圏ロードサイド立地で成長しました。今では全国のローカル立地をほぼ埋め尽くすまでになっています。一方、近年は都市部にも積極的に出店しています。

近年、しまむらのブランド価値は高まっています。「シマラー」と呼ばれる、しまむらの服で全身をコーディネートする人が増えています。若い女性にも支持されるようになり、都市部への出店攻勢を押し進める要因となっています。都市部のしまむらは好調で、都市部の成功が地方店にも好影響を与えています。

次にしまむらの品揃え戦略を見ていきます。しまむらはセントラルバイイング制(本部一括仕入制)を採用しています。メーカーや問屋から商品を仕入れて品揃えを行っています。

本社に所属する約120名のバイヤーが500社以上のサプライヤーから、トレンドや各店の販売力を考慮して商品を仕入れています。バイヤーはパリ、ニューヨーク、ロンドン、原宿、渋谷といったファッションの最先端の街を定点観測し、3カ月先の先読みを行って品揃え計画を立てています。

商品構成は多品種少量が基本で、1店舗に4~5万アイテムを展開しています。同業他社と比べてアイテム数が多いのが特徴です。多品種少量のため、1SKU(単品で在庫管理する単位)の数が少なくなる傾向があります。

例えばアウターを例に挙げた場合、同じサイズ、同じ色のものは1店舗に1点しか置けないことになります。これは、他の人と同じ服を着たくないという消費者のニーズに応えるためにあえて行っています。品切れした場合、追加補充は基本的に行いません。その代わりに逐次新商品を投入します。そうすることで売場の鮮度を維持することができます。

■ 卓越した在庫管理

しまむらは全店の毎日の売上データを1単品まで細分化して管理し在庫の適正化を図っています。売れ残りが多い店舗から売り切れた店舗に商品の移動を1単品から実施することで在庫の偏りをなくしています。売場の鮮度を保ちつつ売り切る体制を構築しています。これは、ドミナント出店を採用しているしまむらならではの手法といえるでしょう。

こうした在庫適正化を行うことで商品を売り切ることができます。結果として値引きを抑えることができます。業界の値引きを含む価格変更率の平均は10%を超えるのに対し、しまむらは5%程度に抑えることができているといいます。

しまむらは店舗間で商品を移動させることで販売機会ロスを減らし、売価変更の発生を抑えています。これを実現するには、高度な物流体制を構築する必要があります。

物流を他の業者に委託する流通企業が多い中、しまむらは6店舗しかない時代から物流システムの構築を開始しました。30店舗を超えた段階で自社運営の物流センターを築きました。初期から多店舗展開を意識し、物流網の構築を行ってきたのです。

しまむらはメーカーから仕入れた商品をすべて在庫化して買い取る「全量買い取り」を行っています。そのため、売れ残りなどの在庫リスクの軽減が求められ、自社物流により在庫を巧みに調整する必要があります。

アパレル製品は流行や季節による需要変動が激しいという特徴があります。そのため、大量の荷物を短時間で配送するスピードが重要となります。

物流システムのさらなる合理化のために、商品の検品、値付け、店舗別仕分けなどを中国で行っています。港からコンテナの状態で日本の物流センターまで配送する「直接物流」を推進しています。相対的にコストが低い中国で実施することで物流コストの削減を実現しています。

しまむらは、自前の物流網をフルに活用することで一商品あたりの物流コストを約50円に抑えることに成功しています。

■ 的確な人件費コントロール

しまむらの強さの一つの理由として、圧倒的な低経費構造を実現していることが挙げられます。要因は大きく2つあります。1つ目は先に挙げた物流網です。そして2つ目は、適切な人件費コントロールにあります。

しまむらはパート社員の比率が高く、約80%を占めています。店長は約70%がパート社員からの登用です。そのため、人件費を抑えることができています。

パート社員を即戦力化するためにマニュアルを整備しています。接客からレジ操作、清掃のやり方までマニュアルに細かく書かれています。

一方、マニュアルの弊害を極力抑えるため、パート社員からの提案を積極的にマニュアルに取り入れ、随時マニュアルを改善しています。マニュアル化による組織の硬直化を防いでいます。

全社員から毎年5万件以上の改善提案が寄せられます。一つ一つを検討し、いい提案は採用されます。新しいマニュアルとして毎月更新され続けています。現場の声を積極的に取り入れることにより、パート社員のモチベーション向上にもつながっています。

しまむらはこのようにパート社員を有効活用することで人件費を抑えていますが、かといってパート社員の時給を低く設定してはいません。地域でトップクラスの高さで設定しています。

標準化されたマニュアルで一人一人の効率を上げることにより少数精鋭を実現しています。結果として人件費を抑えることができています。また、パート社員のモチベーションを下げないように配慮しています。

しまむらはこうした施策により低経費構造を実現しているのです。

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