「サービスが先、利益は後」

この言葉は、ヤマト運輸の宅急便を生み出した小倉昌男氏の経営哲学として有名でしょう。コストがかかって十分な利益が出なくても、顧客を満足させるサービスに磨きをかけ続けていけば、いずれは十分な利益が生まれるというものです。

経営における「言うは易く行うは難し」の典型でしょうか。「本当に利益が出るのだろうか?」「いつ利益が出るのだろう?」「ヤマト運輸が運に恵まれたから言える言葉ではないか?」といった疑念はどうしても生まれてしまうでしょう。

話は少し変わります。米アマゾン・ドット・コムの企業理念は「地球上で最もお客様を大切にする企業」です。顧客の利便性を高めるため、配送センターといったインフラなどに巨費を投じ続けてきました。顧客のためになるのなら利益が出ないことを厭わないという姿勢です。

そのため、アマゾンの通期の純利益は2002年まで赤字が続いていました。営業利益は2001年まで赤字です。しかし、その後は安定的に利益を出しています。まさしく「サービスが先、利益は後」の最たる例と言えるでしょう。

最初は利益を出すことを考えてはいけません。とはいえ、未来に希望が持てなければ継続し続けることはできません。50年経っても利益が出ない、では元も子もありません。いつかは十分な利益を出さなければなりません。

では、いつから十分な利益が出ればいいのでしょうか。1年後でしょうか。10年後でしょうか。20年後でしょうか。このことについて、アマゾンの創立者、ジェフ・ベゾス氏は2012年5月1日付日経ビジネスオンラインのインタビュー記事で次のように述べています。

「待つのは平気です。2、3年でうまくいく必要はまったくありません。状況によっても変わりますが、一般的に私たちの会社が見ているタイムラインは、5年から7年」

事業内容や目的によって違うかと思いますが、「5〜7年」という期間が参考になりそうです。5〜7年続けて十分な利益が出なければ、それ以上いくら続けても十分な利益は出ないということでしょう。いずれにしても、短くはない期間を辛抱しなければならないということですね。

「サービスが先、利益は後」を実現するには、短くはない期間を辛抱強く待たなければなりません。そうなると、自社の利益を追求するという利己的な考えでいては実現できそうもありません。そうではなく、顧客の立場、第三者の立場に立って考えて行動できなければ実現できないでしょう。短期的に利益を追求する利己的な考えを捨て、顧客の立場に立ち続けるという「利他の精神」を育てる必要がありそうです。

利他の精神を育てるには、ローマ皇帝だったマルクス・アウレリウスによる哲学書『マルクス・アウレーリウス 自省録』(岩波文庫/作者:マルクス・アウレーリウス/訳者:神谷美恵子)に収められている次の言葉を参考にしてもいいかもしれません。

「ある人は他人に善事を施した場合、ともすればその恩を返してもらうつもりになりやすい。第二の人はそういうふうになりがちではないが、それでもなお心ひそかに相手を負債者のように考え、自分のしたことを意識している。ところが第三の人は自分のしたことをいわば意識していない。彼は葡萄の房をつけた葡萄の樹に似ている。葡萄の樹はひとたび自分の実を結んでしまえば、それ以上なんら求むるところはない。あたかも疾走を終えた馬のごとく、獲物を追い終せた犬のごとく、また蜜をつくり終えた蜜蜂のように。であるから人間も誰かによくしてやったら、〔それから利益をえようとせず〕別の行動に移るのである。あたかも葡萄の樹が、時が来れば新たに房をつけるように」

アウレリウスが言う第三の人のように、顧客から利益を得ようとせず、顧客のために何かをしたらすぐに別の行動に移るべきなのでしょう。小倉昌男氏もジェフ・ベゾス氏もこれと同じ考えを持っていると言っていいのではないでしょうか。

「サービスが先、利益は後」

「言うは易く行うは難し」だからこそ、行う価値があるとも言えそうです。

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