女子大生のハンバーガー店経営物語

第七章 八百屋の有旬青果

第一節

 バーガーサンデーは桜上水駅から近くの商店街にある。商店街にはコンビニや弁当屋、クリーニング店、婦人服店などが軒を並べる。どこにでもあるような商店街だ。
 商店街には「有旬青果(ゆうしゅんせいか)」という八百屋がある。キュウリやトマト、ジャガイモ、サツマイモ、ニンジンなどの有機野菜を販売している。扱う野菜の種類は一般的な八百屋と変わらない。
 ただ、この有旬青果はただの八百屋ではない。有機野菜を扱っていることも特徴的だが、もう一つ、他ではなかなか見られない特徴がある。それは、「ふぞろい野菜」を扱っていることだ。

 ふぞろい野菜は形が不恰好な野菜のことで、変な角度に曲がっていたり、デコボコした格好だったり、変わった形をしている。色が通常のものと違うものもある。規格外野菜とも呼ばれる。
 味は普通の野菜と変わらない。ただ、見た目が不恰好なので、一般的な八百屋やスーパーでは販売されない。
 有旬青果は有機栽培のふぞろい野菜を扱っている。独自のルートで全国から仕入れているらしい。値段が安いのですみれ一家はよく利用している。料理で使うため、見た目の悪さは気にならないようだ。

 すみれは有旬青果で夕食の食材を選びながら店主とたわいもない話をしていた。母の冬美は療養しているため、買い物はすみれの役割になっていた。
「そういえば、バーガーサンデーの前にある本屋は店を閉めるみたいだってね」
「そうなの? そういえばあまりお客さん入ってなかったからね。そっか、店を閉めちゃうんだ。少し寂しいね」
「時代の流れだよ。本が売れない時代だから」
「最近は電子書籍も普及しているしね」
「電子書籍?」
「そう、電子書籍。スマホとかで読める本のことだよ。画面で読むタイプの本だから紙が不要なの。私のスマホには30冊ぐらいの本が入っているよ」
「そういうものがあるんだ。それじゃ紙の本は売れなくなるな」
「雑誌も売れない時代だしね」
「時代の流れだねぇ」
「私は雑誌をそこでよく買っていたから閉店は困るわ」
「それは困るね」
 二人は本屋の閉店を惜しんだ。

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