女子大生のハンバーガー店経営物語

第九章 差別化とは

第一節

 すみれは夜、雄一郎に電話した。
「お店の前にマイスバーガーができるの」
「マイスバーガーが? 確か閉店した本屋があったけど、そこにできるの?」
「そう。どうしよう、マイスバーガーができたらうちは潰れちゃうよ。全然規模が違うし」
「慌てることはないよ。対策をきちんと行えば問題ない」
「そうかな」
「大丈夫。そしたら明日お店に行くよ。みんなで対策を考えよう」
「わかった」

 翌日、雄一郎はバーガーサンデーを訪れた。
「雄一郎君、大変なことになった」
「マイスバーガーですね」
「そうなんだ。マイスバーガーが目の前に建つことになったんだよ」
「大変ですね」
「人ごとのように言わないでくれよ。マイスバーガーができたらうちは潰れてしまう」
 茂之はすみれと同じことを言った。
「大丈夫ですよ。きちんと対策を立てれば負けません。むしろチャンスです。マイスバーガーは良い競争相手です」
「良い競争相手?」
「そうです。競争相手には良い競争相手と悪い競争相手がいます」

 雄一郎は一冊の本を持ってきていた。『競争優位の戦略』だ。著者はマイケル・E・ポーターで、編訳者は土岐坤、中辻萬治、小野寺武夫、出版社はダイヤモンド社となっていた。
 『競争優位の戦略』には次のように書かれていた。

 競争業者は確かに脅威ではあるが、良い競争業者は、会社の競争的地位を弱めるよりも、むしろ強める。(二四九頁)

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