ドラッカーは「強み」を伸ばせというが…

 経営学者のピーター・ドラッカーは、強みのみが成果を生むと主張している。強みを生かすことが、組織の特有の機能だという。これについて、特に異論はないだろう。強みは差別化を生み出すための源泉だ。強みを磨いてこそ、差別化が生み出される。このことは多くの人が知るところであり、ここでことさら述べる必要はない。強みは徹底的に伸ばすべきだ。

 ところで、「強み」の対極である「弱み」についてはどうだろうか。弱みについて考えることの重要性を理解している人はあまり多くはないように思う。おそらく、弱みを意識することは楽しいことではないだろうし、むしろ面倒なことであり、辛いものでもあるからであろう。誰も好き好んで、自身・自社の弱みについて考えたり話したりはしたくないものだ。

 例えば、「浪費グセ」が弱みだとして、それを直視し、改善しようと考えるのは辛いことだ。改善できないから弱みとなっているわけだから。それよりも、例えば、「ITの技術力」が強みだとして、それを伸ばすことを考えることの方がずっと楽しいはずだ。だから、弱みである浪費グセは脇に置いて、強みであるITの技術力に磨きをかけるというのは多くの人がとる行動であり、自然な流れともいえる。

 だが、こういった弱み軽視の考えは危険だ。弱みは非常に重要で、軽視してはならない。いや、弱みが重要というよりも、「弱みを克服する」ことが重要となる。弱みを克服することで、直接的ではないが、利益をもたらすためだ。

 なぜ弱みを克服することが重要なのか。それは、弱みが小さい方が交渉力が高まるからだ。

交渉力を高めるためには「弱みを克服する」ことが重要

 ビジネスが交渉の連続であるということに異論はないだろう。ビジネスでは、売買交渉や昇給交渉など、あらゆる交渉が頻繁に行われる。同僚との何気ない会話も一種の交渉だ。人間関係の構築を目的とする交渉といえる。いずれにしても、ビジネスでは、あらゆる場面で人間同士、あるいは組織同士のやりとり、つまり交渉が発生する。

 交渉上、特に重要となるのが、「交渉が決裂した場合の損害の程度」だ。これが小さい方が交渉上、より優位に立てる。交渉が決裂した場合、自身のダメージがどれだけ大きいのかを考える。

 自身が被る損害が大きい場合、相手はそれにつけ込んで攻めてくる。「損失」「降格」「低評価」といった損害を意識させ、圧力をかけてくる。その圧力に屈してしまえば、得られる利益は小さくなってしまう。たとえどんなに大きな強みを持っていたとしても。交渉決裂後の損害を恐れ、得られる利益において妥協を強いられてしまうからだ。そのため、交渉が決裂しても、損害が大きくならないようにしておく必要がある。そうなれば、相手に対して強く出ることができる。

 交渉が決裂した場合に損害が大きくなってしまうというのは、それはつまり「弱み」ということだ。弱みにつけ込まれてしまえば、得られる利益は小さくなってしまう。だから、弱みは徹底的に無くさなければならない。弱みにつけ込まれる余地を無くさなければならない。

 組織であれば、構成員の弱みを和らげることができる組織構築や人事を行う必要がある。ドラッカーは〈組織の目的は、凡人をして非凡をなさしめることにある。組織は天才に頼ることはできない。天才は稀である。当てにはできな。凡人から強みを引き出し、それを他の者の助けとすることができるか否かが、組織の良否を決める。同時に、組織の役割は、人の弱みを無意味にすることである〉(『マネジメント[中]』/P.F.ドラッカー著/上田惇生訳/ダイヤモンド社)と述べている。繰り返しになるが、人の弱みを無意味にする必要がある。

 弱みを見つめることは楽しいことではないが、直視しなければならない。弱みを直視するために、SWOT分析という手法がある。これは「強み」「弱み」「機会」「脅威」の4つの軸について現状分析を行い、それに基づいて行動計画を立てるためのツールだ。これを活用してもいいだろう。いずれにせよ、弱みは徹底的に克服する必要がある。盲点になりがちだが、利益をもたらす重要なことであり、直視していきたいところだ。

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