大戸屋飽和、やよい軒爆増で国内店舗数が逆転

 定食チェーン「大戸屋ごはん処」が国内店舗数で「やよい軒」に抜き去られた。11月末時点の国内店舗数は、やよい軒の374店に対して大戸屋は354店(新業態含む)。やよい軒の方が20店多い。直近1年でやよい軒は31店も増えたが、大戸屋は1店の増加にとどまった。大戸屋の国内店舗数は2015年までは増加傾向にあったが、16年以降は概ね340~350店台で横ばいで推移し、現在まで停滞が続いている。一方、やよい軒は近年、出店が加速している。

 両者とも定食を提供することで共通するが、大きく異なるのが価格帯だ。やよい軒の定食の価格は630円(税込み、以下同)からで、中心価格帯は630~800円。なお、定食のご飯はおかわり自由だ(大戸屋はない)。一方、大戸屋の定食は720円からで、中心価格帯は800~1000円。商品平均単価は大戸屋の方が100~200円程度高い。メイン料理が同じ定食で価格を比較すると分かりやすいので一例を挙げるが、やよい軒の「サバの塩焼定食」は630円、大戸屋の「さばの炭火焼き定食」は870円で、大戸屋の方が240円高い。やよい軒は大衆定食店、大戸屋は高級定食店といえるのかもしれない。

 もちろん、単純な価格比較は意味がない。大戸屋の方が高いのには理由がある。大戸屋はセントラルキッチン(複数店舗分の大量の料理をまとめて製造する施設)を持たず、店舗で加工・調理するので、同じ食材の料理でもその分おいしさは上になるだろう。また、大戸屋の定食はメイン食材に付属的に付いてくる小鉢料理が充実している。このように内容が充実しているので、高価格でも大戸屋を評価する消費者は少なくない。

 筆者は、価格と内容(料理の味など)のバランスは互角と考えている。大戸屋は高いが、その分おいしいので満足できる。一方、やよい軒は、おいしさにおいては大戸屋に敵わないが、その分安いので満足できる。満足度は同程度という印象だ。ただ、これから述べる筆者の見解において、価格と内容のバランス(満足度)は重要ではない。価格“のみ”が重要となる。

 大戸屋は価格が高いので、取り込める消費者が少ないという問題がある。都心部であれば大戸屋はさほど高いとは思わないが、地方だとかなり高いように感じる。高所得者にしてみれば、大戸屋の中心価格帯、800~1000円という金額は大したものではないのかもしれないが、一般的な所得の人にすれば、この金額はかなり厳しいものがあるだろう。一つの目安として挙げるが、新生銀行の「サラリーマンのお小遣い調査」によると、男性会社員の一日の昼食代は平均で570円、女性会社員は586円とされており、この場合、中心価格帯が630~800円のやよい軒であれば気軽に利用できるが、800~1000円の大戸屋となると躊躇せざるを得ないのではないか。

 大戸屋は高価格のため、取り込める消費者が限られてくるので、出店できる場所も限られてしまう。特に地方は厳しいだろう。そのため、現在の価格帯であれば、現在の店舗数の約350店程度が限界ということになりそうだ。大戸屋は飽和状態に達しているのではないか。一方、やよい軒は低価格のため、取り込める消費者が多いので、出店できる地域がまだまだあるといえる。さらなる店舗網の拡大が望めそうだ。

 やよい軒が低価格を実現できているのは、規模の経済(スケールメリット)を発揮できているためだ。やよい軒を運営するプレナスは、弁当店「ほっともっと」を展開している。ほっともっとの国内店舗数は11月末時点で2761店。他の業態店や海外の店舗を含めた同社の総店舗数は3401店にもなる。こうした規模の大きさを背景に、食材の仕入れコストや物流コストの低減を図っているのだ。

やよい軒が高利益率の一方、大戸屋は低利益率で客離れも起きている

 プレナスの直近本決算である18年2月期の「やよい軒事業」の業績は、売上高が前期比0.1%増の293億円、営業利益が17.9%増の14億円だった。注目したいのが利益率の高さだ。同事業の売上高営業利益率は5.0%にもなる。近年、外食産業では原材料費や人件費の高騰が続いていると指摘されているが、やよい軒は多少のコスト増であれば、値上げしなくてもやっていける体力を持っていることがわかる。

 一方、大戸屋の業績は厳しい。運営会社の大戸屋ホールディングス(HD)の直近本決算である18年3月期連結決算は、売上高が前期比2.5%増の262億円、営業利益が10.7%減の6億円だった。問題は利益率の低さだ。営業利益率はわずか2.4%にすぎない。今回だけが特別に低いのではなく、これまでも低営業利益率に悩まされてきた。

 大戸屋HDの業績は大戸屋ごはん処がほとんどを占める。そのため、規模の経済を発揮するには、大戸屋を拡大させるしかない。しかし、大戸屋は飽和し、他の業態店が育っていないので、やよい軒のように、グループで相乗効果を発揮するなどして、規模の経済を追求することができないのだ。

 大戸屋はかつて600円台の定食が中心だったが、コスト高や高価格路線を志向したことで価格帯を引き上げてきた経緯がある。しかし、それにより取り込める消費者と出店できる場所が限られるようになってしまった。そして近年はコスト高に悩まされている。やよい軒のように規模の経済でコスト高を吸収したいところだが、それができず、さらなる値上げに追い込まれ、それにより取り込める消費者と出店できる場所がさらに狭まってしまい、規模の経済を発揮することがますます困難になるという負のループに陥ってしまっている。

 高価格帯への移行で客離れも起きている。通期ベースの既存店客数は、18年3月期まで4年連続で前年割れを起こしている。今期(19年3月期)に入っても客離れは止まらず、11月まで8カ月連続で前年を下回っている。今期累計では前年同期比で2.9%の減少だ。消費者の節約志向が根強いなか、現状の価格帯のままであれば、客離れは止まらないだろう。

 やよい軒の快進撃は当面続きそうだ。一方、大戸屋は八方塞がりの感が漂う。抜本的な対策が必要だが、このような状況下、どのような施策を講じてくるのだろうか。今後の行方を注視したい。