「いきなり!ステーキ」の集客力に陰りが見えている

 「いきなり!ステーキ」の客離れが深刻だ。11月の既存店客数は、前年同月比12.1%減だった。10月と8月こそわずかに前年を上回ったものの、9月と4~7月は前年を大きく下回った。飛ぶ鳥を落とす勢いがあった「いきなり!ステーキ」だが、ここにきて集客力に陰りが見えている。

 客数に異変が起きたのは今年4月。前の月の3月は13.9%増、その前の2月は12.7%増と大きく伸びていた。それ以前では30%以上の増加率を叩き出すことも珍しくなかった。なお、2017年12月期通期は23.9%増だった。それが一転、今年4月から客数減が続くようになった。

 客離れにより既存店売上高も減っている。11月まで8カ月連続で前年を下回っているのだ。減少幅も大きく、たとえば、11月は13.1%減と大きく減っている。他の月も減少幅が大きく、10%程度の大幅減となった月が少なくない。

 「いきなり!ステーキ」は立ち食い形式を採用したステーキ店で、手頃な価格量り売りで食べたい量だけを注文できることが受けて人気を博すようになった。立ち食い形式を採用したことで狭い敷地でも多くの来店客を収容でき、高い回転率を可能にした。これにより家賃比率などを抑えてその分を食材の原価に充てることができ、高品質のステーキを低価格で提供することが可能になった。

 このビジネスモデルで特に重要となるのが回転率だ。高い回転率だからこそ高いコストを賄うことができ、利益を確保することができる。しかし、客数減による回転率の低下でこれまでのような高い利益を確保することができなくなる懸念が生じている。

飽きられたことと値上げが客離れの原因?!

 客離れが起きたのはブームが一巡したことがあるだろう。客離れが起きる前の客数は前年を大きく上回っており、昨年4~11月の前年同月比増加率はいずれの月も20%超と大きく増えていた。今年起きた客離れはその反動減と考えられる。

 昨年は何かと「いきなり!ステーキ」が話題になった。17年2月に「いきなり!ステーキ」で海外初となる店舗をニューヨークに出店。同年5月に運営会社のペッパーフードサービスが東証マザーズから東証2部へ市場変更し、そのわずか3カ月後の8月には東証1部に昇格した。また、17年は店舗数が大きく増えており、16年は約40店増にとどまったが、17年は約70店増と大きく増えている。大量出店で認知度が急激に高まった。

 こういったことで「いきなり!ステーキ」に注目が集まり、「物は試し」ということで訪れた人が少なくなかったと考えられる。しかし、ブームにありがちなことだが、リピーターになる人は多くなかったのではないか。

 値上げも客離れの要因になっていると考えられる。例えば、「リブロースステーキ」(現在1グラム当たり6.9円)の1グラム当たりの価格は昨年7月以前と比べて0.4円高くなっている。「ヒレステーキ」(同9円)は昨年3月に0.5円値上げした。0.4円や0.5円の値上げというと大したことではないように聞こえるかもしれないが、最低の注文量が前者は300グラム、後者は200グラムとなっているので、注文単位の最低値上げ金額は120円、100円にもなる。こうしてみると、値上げによる影響は決して小さくはないのではないか。

 実施した値上げはこれだけではない。たとえば、今年5月にも値上げを実施している。「国産牛サーロインステーキ」(現在1グラム当たり11円)と「国産牛リブロースステーキ」(同11円)をそれぞれ1円値上げした。値上げ率は10%にもなる。どちらも最低注文量が200グラムなので、両方とも200円以上高くなったことになる。どちらも一部店舗での販売商品となるが、販売店舗の利用客がこの値上げを嫌って店を利用しなくなったことが考えられるだろう。

 これまでに挙げた例は一部に過ぎず、他にもいくつか値上げしている。こういった値上げにより値ごろ感が急速に低下しており、最近は「大して安くない」といった声を耳にすることが少なくない。価格の高さを嫌う人が増えたことで客離れが起きた側面があるのではないか。

大量出店が続いているが…

 「いきなり!ステーキ」では客離れが起きているが、一方でそれを補って余りあるほどの出店を続けているので業績は悪くない。18年1~9月期の「いきなり!ステーキ」事業の売上高は、前年同期比2倍の381億円と大幅な増収を達成した。この9カ月で147店も増えたことが主な要因だ。なお、9月末時点の店舗数は335店となっている。店舗数の増加で自社競合が発生し、それにより客数が減っている側面もあるだろう。しかし、「混雑が緩和できるのでそれによる客数減は問題ではない」と言わんばかりだ。

 「いきなり!ステーキ」のおかげでペッパーフードサービスの業績も好調だ。18年1~9月期は、売上高が前年同期比79.7%増の450億円、営業利益は42.0%増の23億円だった。もっとも、好調な業績を支えているのは「いきなり!ステーキ」事業だけではない。低価格ステーキ店「ペッパーランチ」を運営する事業も業績は好調だった。

 このように「いきなり!ステーキ」は好調ではあるが、油断はできないだろう。客離れが一時的なものではない可能性が十分ある。飲食業界では、ブームが去ったことや値上げを実施したことで一気に転落していった例が枚挙にいとまがない。近年でいえば、ドーナツチェーン「クリスピー・クリーム・ドーナツ」が、ブームが去ったことが一因で大量閉店を余儀なくされている。居酒屋チェーン「鳥貴族」は昨年10月に商品を一律280円から298円に値上げしたことで客離れが起き、それにより業績が悪化している。「いきなり!ステーキ」が同じ憂き目にあわないとは言い切れない。

 また、急激に店舗数を増やしたことでサービス品質が低下したり、管理が行き届かず、経営の根幹を揺るがすような不祥事が起きないとも限らない。07年にペッパーランチの店舗従業員が女性客に性的暴行を加える事件が起きているが、管理の甘さから似たような事件が再び起きてしまえば、一気に転落していくことになるだろう。

 いずれにせよ、「いきなり!ステーキ」の客数の動向は今後も注意深く見守っていく必要がありそうだ。客離れが一時的なものかそうでないのかを慎重に見極めることが求められているのではないだろうか。