牛丼店「吉野家」はモー限界?!

 吉野家ホールディングス(HD)は鶏肉を使った新業態の出店を進め、脱「牛依存」を急ぐ。

 吉野家HD子会社のスターティングオーバーは12月7日、親子丼とから揚げを主力とする「鶏千」の新高円寺店(東京都杉並区)をオープンした。

 ブランドタマゴと鶏肉、店舗でとったダシで作られる「親子丼」のほか、特製のタレに漬け込んだから揚げがメインの「から揚げ定食」などを販売する。アルコールを扱うほか、手羽先やから揚げなどおつまみメニューも用意し、夜の「ちょい飲み」需要にも対応する。テークアウト用の持ち帰り窓口も設けた。新高円寺店は「鶏千」の3店舗目となる。

 同社はから揚げの持ち帰り店「からから家」も展開する。さまざまな味のから揚げを取りそろえているのが特徴だ。正統派の「からカリ」や塩味の「塩からカリ」、ニンニク風味の「からからニンニク」などがある。現在6店舗を展開する。

 吉野家HDでは主力の牛丼店「吉野家」が国内で店舗数が伸び悩んでいる。他に「はなまるうどん」などが育ってはいるが、鶏肉業態の「鶏千」と「からから家」を新たな成長ドライバーにしたい考えだ。2019年度に計10店舗出店する。

 同社が鶏肉を使った新業態を出店するのは、消費者の健康志向の高まりと根強い節約志向がある。低価格で健康的なイメージが強い鶏肉の人気が高まっているのだ。農畜産業振興機構によると、食肉の消費において、かつては豚肉が不動の1位だったが、12年に鶏肉が取って代わり、以降、鶏肉が1位をキープするようになったという。

 こういったことから、同社は鶏肉業態の出店を進めているわけだが、実は、鶏肉では痛い目も見ている。吉野家で今年4月に販売を始めた「鶏すき丼」がそうだ。「鶏も、うまいぞ。」のキャッチフレーズで6年ぶりに販売する鶏肉を使った商品だったが、早くも販売休止に追い込まれている。

 販売休止の理由は手間がかかるためだ。鶏すき丼の鶏肉は店舗で下処理と加熱処理を行い、注文を受けた後に店内で焼き上げる。こういった店内調理を売りとしていたが、一方で店の従業員の作業量が増え、大きな負担になっていた。

 吉野家HDは、原材料費や人件費の高騰などで低利益に悩まされている。2018年3~8月期連結決算は、最終損益が8億5000万円の赤字(前年同期は12億9000万円の黒字)だった。19年3月期は6期ぶりに最終赤字に転落する見通しだ。こういった状況のため、販売に手間がかかり利益を損なう恐れが多分にある鶏すき丼の販売を休止することにした。このような失敗があったが、鶏肉を使った料理は需要が見込めるため、新業態にて取り込みを図る考えだ。

 鶏肉を使った新業態の開発に力を入れているのは吉野家HDだけではない。たとえば、居酒屋「和民」を運営するワタミが筆頭格だろう。

ワタミは「ワタミ隠し」に鶏肉を利用?!

 同社は「ブラック企業」批判などで業績不振に陥ったが、最近は底を打ちつつある。業績回復の切り札として投入されたのが、から揚げがメインの居酒屋「ミライザカ」と、焼き鳥がメインの居酒屋「三代目鳥メロ」だ。イメージが悪化した「ワタミ」の名がある「和民」「わたみん家」を転換するなどして両鶏居酒屋を増やしている。9月末の店舗数は、「和民」が96店にまで減った一方、「ミライザカ」が149店、「三代目鳥メロ」が134店にまで増えた。「わたみん家」は廃止している。こういった転換は「ワタミ隠し」にもなり、業績回復に貢献している。

 両鶏居酒屋以外にも、続々と鶏肉を使った新業態を開発している。たとえば、11月に東京都大田区にから揚げと卵焼きがメインの飲食店「から揚げの天才」をオープンした。卵焼きは、実家が卵焼き店で演出家のテリー伊藤氏と組んで開発した。から揚げや卵焼きのほか、から揚げと卵焼き、ご飯、みそ汁などがセットになった「からたま定食」など定食メニューも用意。アルコールも提供し、夜はちょい飲み需要を取り込む。

 フライドチキン店「ビービーキュー オリーブチキンカフェ」もワタミが展開する鶏肉業態の一つだ。ビービーキューは韓国最大のフライドチキンチェーンで、ワタミはビービーキューと提携し、日本で店舗展開している。フライドチキンやササミフライ、チキンサラダなど鶏肉料理を専門的に提供している。

 ワタミが展開する中華料理店「ワンズガーデン」では麻婆豆腐や小籠包などのほか、バンバンジーや蒸し鶏のサラダ、フライドチキンなどの鶏肉料理を提供する。米国風レストラン「TGIフライデーズ」ではハンバーガーやステーキなどのほか、手羽のフライやグリルドチキン、ササミフライなどの鶏肉料理を扱う。居酒屋「炭旬」では主に焼き鳥と海鮮料理を提供し、「和民」でも焼き鳥や各種鶏肉料理を扱っている。

 外食業界では、鶏肉を使った業態へ参入する企業が増えている。特にから揚げ専門店が顕著だ。アークランドは14年に「からやま」の1号店を開いた。すかいらーくホールディングスは17年から「から好し」を始めている。ワタミの「から揚げの天才」や吉野家HDの「からから家」「鶏千」なども含めたから揚げ市場は熱を帯びる。から揚げ専門店は小さな店舗でも収益を上げやすいため、今後の出店が加速しそうだ。

 鶏肉市場を巡る飲食店の戦いは始まったばかりだが、どの企業がリーダーになるのかに注目が集まる。