「たこ焼き店がお好み焼き」のなぜ

 ホットランドは傘下のたこ焼き店「築地銀だこ」と、たこ焼きと一緒にアルコール類を提供する「築地銀だこ大衆酒場」で、“お好み焼き”を強化している。どちらもたこ焼きをメインとする外食店だが、似たような料理とはいえ、なぜたこ焼き店でお好み焼きを売らなければならないのか。

 「築地銀だこ イオンモールりんくう泉南店」(大阪府泉南市)は3月1日からお好み焼きを売り出した。3月9日にオープンした「築地銀だこ大衆酒場 元住吉店」(川崎市)もお好み焼きを販売している。なぜたこ焼き店がお好み焼きを売らなければならないのかを知るべく、筆者は「築地銀だこ大衆酒場 元住吉店」を訪れてみた。

 昼時に訪れたため、店内は昼食を目的とした客で賑わっていた。筆者は店内飲食用メニューの「お好み焼き 豚玉」(税抜き440円)と「たこ焼き(4個)」(同310円)を注文してみた。味はどうだろうか。

 たこ焼きはおいしかった。たこ焼き店なので当然といえば当然だが。ではお好み焼きはどうだったかというと、こちらも同様においしかった。どちらもコスパは悪くないと感じた。他の店内客もお好み焼きを評価しているようで、たこ焼きよりもお好み焼きを注文している人が多かった。こうしたことから同店のお好み焼きはアリだと思った。そしてお好み焼きが売り上げ増に寄与しそうなことがわかった。

 ただ、なぜ“”お好み焼きを強化しているのかについてはこのことだけではわからないだろう。別の角度からの分析が必要でそれを披露しようと思うのだが、その前にホットランドの業況について簡単に触れてみたい。

「築地銀だこ」は飽和?!

 主力の「築地銀だこ」の1号店が誕生したのは1997年。「皮はパリッと、中はトロッと、たこはプリッと」がキャッチフレーズのたこ焼きを武器に大きく成長してきた。ただ、最近は伸び悩みを見せている。「築地銀だこ」事業の2018年12月末時点の国内店舗数は427店だが、1年前からは9店減っている。成長が止まった状況にあるのだ。

 一方、衰えが見えてきた「築地銀だこ」に代わって店舗数が増えているのが「築地銀だこハイボール酒場」や「築地銀だこ大衆酒場」などアルコール類を提供するたこ焼き店居酒屋だ。この2業態を主軸とした「銀だこ酒場」事業の18年12月末時点の国内店舗数は55店で、1年前から15店増えいている。こちらは成長途上だ。

 「築地銀だこハイボール酒場」はたこ焼きやハイボールなどを立ち飲みスタイルで提供するたこ焼き居酒屋で、駅前立地が多いのが特徴だ。会社員を中心としたアルコール類を気軽に楽しむ「ちょい飲み」需要を取り込む狙いがある。アルコールの構成比が高いため原価が低く、「築地銀だこ」よりも利益率が高いという。

 「築地銀だこ大衆酒場」はたこ焼きやアルコール類のほか、もつ焼きなど炭火焼き料理が充実しているのが特徴のたこ焼き居酒屋で、主戦場を下町としている。シニア層をメインターゲットとしながらも、幅広い客層を取り込むことを目指している。席は着席スタイルを採用している。

 どちらもアルコール類や非たこ焼きメニューが充実しているのが特徴だ。ただ、たこ焼きがメインであることに変わりはない。たこ焼きあってのアルコール類であり、他の料理はあくまで脇役に過ぎない。あくまでたこ焼き居酒屋だ。

 このようにホットランドのほとんどの事業はたこ焼きがあってこそとなっている。たい焼き店「銀のあん」など非たこ焼き業態も展開しているが、いずれも小粒で、あくまでたこ焼き店がメインとなっている。そういった状況のなか、近年、そのたこ焼きに“異変”が起きている。そして、そのことがお好み焼きの強化に走らせている側面がある。では、その異変とは何か。

たこ焼きだけに…

 近年、タコの卸値が高騰している。東京・豊洲市場の冷凍ボイルタコの18年の卸値は例年と比べて3~4割程度高い。18年は日を追うごとに価格が上昇しており、東京都中央卸売市場の平均卸値は18年1月が1キロ1741円だったが、12月には2444円にまで跳ね上がっている。主産地で漁が低調だったことと海外で需要が高まったことが影響した。こうした異変がホットランドのたこ焼きを直撃したのだ。

 「築地銀だこ」はタコの価格高騰が一因で値上げを余儀なくされている。18年7月からたこ焼きの価格を引き上げており、例えば8個入りのたこ焼きは30円引き上げて税込み580円としている。この値上げは競争力を削いだ面がある。値上げ以降の既存店客数は前年割れの月が多く、前年割れは19年2月まで5カ月連続となっている。客離れが止まらない状況だ。

 このように、たこ焼きだけに頼ってしまうと、「タコの価格高騰」というたった1つの要因だけで業績が悪化するリスクが生じてしまう。そこで、たこ焼き以外のメニューも豊富に扱う「銀だこ酒場」事業を強化してリスク分散を図っているわけだが、主力の「築地銀だこ」事業でもリスク分散を図る必要があると考え、お好み焼きを強化している側面があるのだ。お好み焼きはたこ焼きと似たような料理だが、タコを必要としないため、タコの価格高騰の影響を受けることがない。お好み焼きを扱うことでリスク分散化を図ることができるといえる。

 ホットランドはお好み焼きを強化するため、18年10月に、東京都内でお好み焼き店「ごっつい」を展開するアイテムを買収している。同社が持つお好み焼きのノウハウを「築地銀だこ」などにも生かし、お好み焼きを扱う店舗を増やしていくとしている。ホットランドはお好み焼き専門店も増やす考えで、2月末に専門店「おこみ」(東京都日野市)を開いた。お好み焼きは海外で知名度が高まっており、訪日外国人を取り込む狙いもある。

 ホットランドの業績はここにきて急ブレーキがかかっている。それまで連結売上高は右肩上がりで成長してきたが、18年12月期は「築地銀だこ」事業の店舗数が減ったこともあり前期比2.1%減の317億円と減収になってしまった。本業のもうけを示す営業利益は主要原材料のタコの仕入れ価格が高騰したことが大きく影響し22.0%減の8億円だった。最終的なもうけを示す純利益は不採算店の閉鎖損失を計上したことなどが影響し6億円の赤字(前期は4億円の黒字)に転落した。

 ホットランドはここにきて業績が悪化しているわけだが、お好み焼きを1つの起爆剤にして業績を上向かせたい考えだ。